情景「プールサイド」

2021/04/22

芝に咲く花々

芝生の緑が日一日と濃さを増しています。芝の合い間からは様々な草たちが顔を出してきます。
郷の植栽管理は、できるだけ自然のままにを基本にしています。いろいろな花が顔を見せてくれる所以でしょうか。雑草と切り捨てられがちな草たちも、ここでは美しく庭園を彩ってくれ、芝を凌駕するが如き勢いを見せることも少なくありません。
自然のままとは言え、グランドカバーには定期的な刈込が必要です。夏に向かって刈込頻度は上がっていき、週一のペースへとたどり着きます。人為的な手助けもあって芝はベースとしての地位を確保することになります。芝刈り機を握るとき、ごめんなさいの言葉がよぎるのです。

 

(以下、柴橋さん投稿です。)

驚いたことに、毎度出入りしているプール棟の扉のすぐ傍の足元で、初めての花に出会いました。しかも満開になるまで、全く気が付かなったのですから、灯台下暗しとはこのことです。シロノヂシャ(白野萵苣)という、大きさが1ミリくらいの花です。「シ」ではなく「チ」に濁点なのは、名前の由来が、野にあるチシャ(萵苣)というノヂシャ(野萵苣)に似た白い花ということだからとか。チシャとはレタスのことです。でもノヂシャはチシャの近縁ではないそうですし、ノヂシャ自身も白い花とかで、困惑します。葉の爽やかな緑がこの花の純白さを一層際立たせているように思います。

今の時期、芝生に、暗い色の穂が沢山現れています。野芝の穂です。よく見ると、それぞれの穂に花らしからぬ花がいっぱい咲いています。芝生の庭には沢山の小さな花々が見られますが、一番多いのは芝そのものの花ということになるのでしょうか。

芝はイネ科に分類されているだけあって、稲穂とほぼ同じ造りです。なので、あまり花らしくありません。まずは雌蕊が現れ、風で飛んでくる花粉を捉えます。

やがて雌蕊はしおれます。

しばらくすると雄蕊が現れて、花粉を風で飛ばします。自家受粉を避ける巧みな仕掛けです。

イネとは違い、種を残す確率は極端に低く、種ができても発芽に至る確率もまた極端に低いそうです。結局、野芝の穂は、実用価値はないわ、なのに栄養分は消費するわ、緑の芝生を黒く見せてしまうわ、…という訳で、せっかく現れてもすぐに芝刈り機で刈り取られる運命に…

夕方になると、芝生のあちこちで、薄い黄色のコマツヨイグサ(小待宵草)が花を開きます。大きさは2センチ強でしょうか。翌日にはしぼみ、しおれると赤みを帯びます。コマツヨイグサを含めたマツヨイグサ属の花の総称である「月見草」として馴染まれている方も多いと思います。

ひっそりと咲いている、ユウゲショウ(夕化粧)です。大きさは1センチくらいです。名前からして夕方遅くに花開くのかと思いきや、意外にも昼頃には咲き出しているようです。

小さくて目立たないものの可憐な花は、他にも数多くあります。これはツルウメモドキ(蔓梅擬)の雌花です。雄蕊はあるものの、退化しています。ツルウメモドキは雌雄異株で、雄花を探したのですが、まだ開花したものは見つかりませんでした。

大木のクスノキ(楠)も、花は小さく5ミリくらいしかありません。まとまって満開になってからでもないと見逃されてしまいそうです。今はまだ丁度咲き始めたばかりです。

こちらは逆に蕾状態でも華やかに目立つカルミアです。アメリカシャクヤクという名でも知られていますが、シャクヤク(芍薬)の仲間ではないそうです。アポロ(チョコレート)の様な可憐な姿と、白から薄紅への美しい色の推移が印象的です。

タブノキ(椨)の成長した葉芽は、鱗芽の基部の白い部分と少しくすんだ赤みを帯びた部分とが縞模様を成す美しい姿となっています。

それが開いた若葉は、紅色に輝く花のようです。

花の様な若葉といえば、こちらもそうです。微妙な濃淡の美しい紅色と魅惑的な薔薇の蕾の様な容姿に見惚れるだけで、これが何の木なのか思いあぐねていたところ、葉のつき方と木肌に着目したMさんが、サルスベリ(百日紅)であることを指摘して呉れました。言われてみれば確かに。「木を見て森を見ず」ならぬ「葉を見て木を見ず」を反省です。

(Mさん、師を超えましたね。)

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