2021/04/15
暖かくなったなと脱いだコートを、北からの冷たい風にもう1度羽織らされたりしています。今朝がたは一段と冷え込みました。
花冷えを繰り返しながら成長していく草花の様子を細やかな柴橋さんの視線が見つめます。
(以下、柴橋さん投稿です。)
庭の北西、葉が茂った桜の杜が作る心地よい半日陰に、紫色の濃淡の推移も美しく、タツナミソウ(立浪草)が群生して咲いていました。軟毛に覆われた兜状の頂から周辺部が白っぽい下唇を突き出している花が長い基部から急に曲がって直立し、それらが一本の花茎から縦に並んでどれもが同じ方向を向いている姿は、その名前の示す通り、泡立って寄せ来る波の様です。
近くにはカタバミ(片喰)が咲いていて、アブ(ホソヒメヒラタアブ(細姫扁虻))が寄ってきていました。カタバミは繁殖力が強く、そのためか、子孫繁栄や世襲を願う多くの武将の家紋にも採り入れられています。逆に、どこにでも蔓延るので、花自身は可憐なのに、厄介者扱いされがちでもあるようです。この写真で奥に写り込んでいるのは、スズメノヤリです。
花の中心に向かって赤紫色が濃くなっているベニカタバミ(紅片喰)も群生していました。花はカタバミより大きめですが、葉は、カタバミと同じく、心臓形の小葉3枚で三つ葉になっています。カタバミ共々、ここのみならず、プール管理棟入口花壇を始めとして、郷のあちらこちらに群生しています。因みに、園芸品種の「オキザリス」も、カタバミの仲間です。
付近にナガミヒナゲシ(長実雛罌粟)が咲いていました。朝に咲いて夕方には散ります。薄い紙で作られているかのような花弁が印象的です。「ナガミ」と付いているのは、「罌」(かめ)が意味する口が細くなった甕(かめ)の様な果実(「からし坊主」ですね)がヒナゲシよりかなり細長いからですが、もはや元祖より勢力は拡大しているようです。ヒナゲシに「粟」の文字が使われているのは、種がアワに似ているからだとか。文字通り芥子粒の種です。
芝生が少しずつ緑に戻ろうとする中で、ところどころに、小さくてやや細長い三つ葉が密集している緑濃い一角が目につきます。そこに大きさが僅か数ミリの黄色い花が、と思ったら、それはもっと小さい花の集まったものでした。小さな花が集まって一つの花の様に見えるのは馴染みのあるシロツメクサと同じですが、それよりずっと小さく、コメツブツメクサ(米粒詰草)と付けられている名前に納得です。
傍には、オオイヌノフグリにそっくりながら、それよりずっと小さい花が咲いていることに気付きました。タチイヌノフグリです。茎が真っ直ぐ立ち上がっていることもオオイヌノフグリとは違う点で、名前の由来になっています。茎の下の方に見える扁平でハート形をしたものは、花が終わった後の果実です。
どれが一つの花なのか判然としませんが、小さな突起が花粉袋である葯(やく)をつけた雄蕊のようです。黄緑の沢山の多角形のうち、先端から二つめの真ん中近くにポツリと黒い点が見えますが、これが雌蕊のようです。そうだとしても、やはりどこからどこまでが一つの花なのか判然としません。
もう少し下の方を見ると、多角形がはっきりと凸凹になっていますから、これが一つ一つの花の子房なのでしょう。それらを囲んでいるのが萎んだ雄蕊のようですが、隣接する花のどちらに付随していたのかは、やはり判然としません。不思議な構造の花です。
近くに生えているスイバ(酸葉)は、道端で目にすることも多いと思いますが、丁寧に見ると紅色と緑色の蕾が混ざって美しい色合いをしています。食べると酸っぱいことが名前の由来だとか。保護色のヤブキリ(藪螽蟖)が見つけられますか?
やはり道端でよく見掛けるハルジオン(春紫菀)の蕾は、いつも力なく下向きに項垂れているように思います。シオンという秋に咲く花の春版という意味の名前ですが、シオンとは無関係だそうです。紛らわしい名前を付けられてしまった蕾が意気消沈しているかのようですが、それでも花が開くとシャキっとするようになります。
常緑の樹々にとっても花の季節です。北の敷地境の近くには高木のタブノキ(椨)が何本もあります。形の良い紡錘形だったタブノキの冬芽には沢山の葉芽と花芽が混在していたようで、ほころび始めると共に花が開き始めました。高木の姿に似合わず、目立たない小さな花ですが、120度の回転対称の幾何学が美しい形をしています。これで香りが良ければ尚良いのにと思うのですが …
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