2024/04/18
日本の桜を隈なく知るという勝木俊雄さん(森林総合研究所)の話を聴いた(4/14ラジオ深夜便)。桜にはたくさんの種類があるが、日本の桜の野生種はヤマザクラ、オオヤマザクラ、オオシマザクラなどわずか10種類ほどなのですよと語る。この野生種をもとに人が作り出した栽培品種が100種類以上あるのだそうだ。ソメイヨシノはエドヒガンとオオシマザクラの交配、カワズザクラはカンヒザクラとオオシマザクラの自然交雑種とのこと。有名な三春(福島県)の滝桜は野生種の1つエドヒガン、この種は長寿命で三春のは樹齢1000年を数えるのだそうだ。桜を分類するという作業は、“分ける”のではなく“まとめる”ことなのですという言葉に桜博士ならではを感じた。昔、青春18キップで桜前線を追ってるんだという友がいた。至る所で己が自慢の桜が咲き、そして散り、前線は静かに華やかに北上していきます。
(以下、柴橋さん投稿です。)
世の中の関心が桜の開花に向いている時期に同じくして、エノキ(榎)が沢山の花を枝いっぱいに咲かせます。雄花と両性花があり、4本の雄蕊を手裏剣の様に十文字に広げているのが雄花、にょろりと雌蕊を出しているのが両性花、共に花弁はありません。
両性花の雄蕊の展開は雌蕊より遅れるのは自家受粉を避ける工夫なのでしょう。ご覧の様に、花柱を残したままの幼果の付け根で雄蕊が展開されています。
新緑が美しいイロハモミジ(伊呂波紅葉)、やはり雄花と両性花が咲いています。共に葉の影に咲く小さな花なのですが、萼片の赤い色のせいか結構目立ちます。両性花では先端が二裂した雌蕊が見られます。この写真では葉に一部隠されていますが、プロペラ状の幼果も見えています。
ほかの落葉樹からも新芽が続々と。これはハゼノキ(櫨の木)。その新緑も美しいのですが、着目して欲しいのは寧ろその付け根。あの如何にも頑強そうだった冬芽が、重厚な扉を開いたという感じなのです。
こういう新芽もあります。直径は4センチくらいでしょうか。ゼンマイにしては大き過ぎる様ですし… 虫の卵みたいなものが沢山ついているし…、はて?
うわぁ、何これ?! 寄生虫? と思うと…
えっ、何これ?! ピップエレキバンのオンパレード?
答えはオニヤブソテツ(鬼薮蘇鉄)の胞子嚢群(ソーラスと呼ばれる)です。ということは、個々のエレキバンの周囲に見られるゴマの様なものが胞子なのでしょうか。一番右の方の二つは、真ん中のポチも見えなくなるほどのゴマだらけです。
1枚前の写真はオニヤブソテツの開いて間もない葉、その前の写真は展開前のゼンマイ状態。ゼンマイは特定のシダを意味してしまうので、一般的なシダ類の展開する前の葉の状態を、バイオリン(フィドル)など弦楽器の先端の装飾に模して、フィドルヘッドと呼ばれることも多い様です。
顕花植物に戻りましょう。旧第一病舎北の大きな桜の根元付近、薄紫色のタツナミソウ(立浪草)にやや遅れて、白版のシロバナタツナミソウ(白花立浪草)も多数咲き出ました。花があるとやはり小さくとも華やかです。
プール棟北の大きな桜の根元付近には、ヤエムグラ(八重葎)が花を咲かせています。直径約1.5ミリと極小で地味ではありますが可憐な花です。衣服などにくっつく丸い果実の方が、厄介者としてではあっても寧ろ知られているかも知れません。八重葎の名は百人一首の「八重葎茂れる宿の寂しきに人こそ見えね秋は来にけり」でもよく知られていますが、ヤエムグラは秋には枯れてしまうので、この和歌で歌われている八重葎はヤエムグラではなく他の植物とする説が尤もの様に思えます。
和歌繋がりで、今回の最後はヤエヤマブキ(八重山吹)の花。驟雨に遭って蓑を借りんとした太田道灌に対し、蓑(みの)ひとつの持ち合わせもない貧しき家の娘は、花咲くひと枝の八重山吹を差し出ししたというあの逸話です。「七重八重花は咲けども山吹の実の(みの)一つだになきぞ悲しき」という和歌にかけて蓑のひとつの持ち合わせもないことを婉曲に伝えたものだという、出来過ぎの感はあるものの見事な話です。確かに山吹は結実する一重咲きのものの方が少なく、多くは結実することのない八重咲きの山吹です。
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