2022/04/28
芝生が青くなり始めてしばらくが経ちました。芝生に先んじて、或いは負けじと生えてくる草たちは、ややもすると雑草と片付けられがちなのですが、今年は“鬱蒼”となるまで刈込が控えられてきました。植栽担当の粋なはからい。お陰で、オオイヌノフグリ、ホトケノザ、カラスノエンドウ、スズメノエンドウ、スズメノヤリ、コハコベ、カタバミ、コメツブツメクサ、・・・と、郷の春を次々に彩る草花をいつもに増して楽しむことができたのでした。
4月も末、季節は晩春から初夏へ、伸びた草の刈込みが始まっています。
惜しまれて春告げし草の刈られたり
(以下、柴橋さん投稿です。)
桜の大樹の下、元気良く跳ねている様なこの真っ白い花は、薄紫色に斑模様が普通のタツナミソウの白花種、シロバナタツナミソウ(白花立浪草)です。斑らもなく、本当に真っ白で華麗です。茎から出て急に直角に曲がって上向きに伸び、最後は白波が崩れる容貌ですから、この名前には納得です。
その近くで、うっすらと紅がかった蕾がうなだれているのは、ハルジオン(春紫苑)です。何となくしおらしい印象です。それでも徐々に首を上げて、開花の時にはしっかりと上を向いています。名前は春に咲くキク科のシオン(紫苑)という意味の様ですが、シオンの蕾の方はうなだれることはありません。
小穂がうなだれると言うよりも極細のバネで吊られている様な姿は、コバンソウ(小判草)です。吊り下げている弾性に富んだ枝は本当に極細ですが、こんな細さの中に、本体との間で水や栄養分をやり取りする構造があるのでしょうか?
小判が鋳造されて市場に出てくる瞬間です。小判に相応しい美しい光沢です。最初は1つ2つかと思いきや、出るわ出るわ ……、前掲の写真の様になりました。これから更に大きくなり、ずっしり重い小判となります。
新しい葉がうなだれているのは、ヤツデ(八手)です。葉茎は真っ直ぐに威勢が良いのに、先端から急にしおれ、茶色っぽい葉の裏面を見せてぐったりとしている様子は、しおらしいどころではなく、大丈夫かなと思えたのでしたが …… 心配無用でした、今はもう、しっかりした葉になっています。
対照的に、その隣で、若葉の勢いというのは最初からこうでなくては、と思わせてくれるのは、カクレミノ(隠蓑)です。偶然にも、お日様までもが隠蓑を使う格好となり、後光が射す構図となりました。
下を向いて咲いているのが多いグミ(茱萸)の花です。甘い香りがします。「茱萸」をグミと読ませるには無理があります。音には関係なく漢字表記をそのまま導入したからなのでしょう。花弁はなく、花弁の様に見えるのは萼筒だそうです。
良い香りと言えば、タチジャコウソウ(立麝香草)が咲いています。香草としてタイムと言った方が通りは良いかも知れません。唇形の淡紅色の小さな花です。上唇は2枚の花弁、下唇は3枚の花弁です。雌蕊が突出している花と雄蕊が目立つ花とがあります。雌花が先に開いて翌日雄花が開くという解説がありました。確かめてみたいと思うのですが、さてどうすれば……
葉が香料として使われる植物の花をもう一つ。ゲッケイジュ(月桂樹)です。雌雄別株で、日本には雌株が少ないそうです。確かに街中で見る月桂樹の花は雄花ばかりの様な気がします。でも、ご覧の様に郷の庭にある月桂樹は雌花を咲かせています。
芝生の花が目につくようになりました。郷の庭の芝はノシバ(野芝)だそうです。芝はイネ科植物です。先ず雌蕊だけが出現して、雌性期の花となります。自家受粉を避ける仕組みです。
やがて、雌蕊は枯れ、今度は葯を持つ雄蕊が出現し、雄性期の花となります。葯が破れて花粉を放出して、花としての役割終了です。芝の占めている面積からすると、数からいえば、郷の庭の中ではノシバの花の数が一番多いことになるのではないでしょうか。でも芝の花の結実確率はどういう訳か極めて低いのだそうです。
目線を上げると、萼まで赤いベニカタバミ(紅片喰)が目に入りました。艶のある鮮やかな赤紫色の花です。花弁に暗紫色の条が入り、条が集中する中央部分は特に色濃く見えます。片仮名は使わずに出来るだけ和名でと心掛けていることもあり、花の色を文字で表すのに、いつも苦心しているのですが、この花の色を「ギャル系の濃いピンク色」としている文に出喰わし、妙に納得させてしまうその表現に笑ってしまいました。
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