情景「プールサイド」

2022/04/21

藤ひらく

藤の花芽が伸びだしたのに気付いたのは、桜が満開を迎えた3月も末のことでした。長径1cmほどの楕円形だった花芽は日に日に伸びて、4月初旬には5cmを超えるまでになり、やがて花穂を垂れさせるようになりました。女性の淑やかさを湛(たた)えるかのような落着いた優雅な佇まい。桜から藤へと郷の景色が変わってゆく。
熊蜂(くまんばち)が近づく我には目もくれず蜜を貪っていました。

藤の香に誘われ蜂の朝げかな

 

藤以外もそれぞれの春を迎えています。
(以下、柴橋さん投稿です。)

花と葉が同時に開くこの桜はヤマザクラ(山桜)でしょうか。周りの桜の樹がどれも葉桜になった今、満開となって上品な甘い香りを漂わせています。葉茎の上の方に、一対のイボの様なものがあるのがお分かりでしょうか。蜜腺です。花とは別に、葉の根元からも蜜を出す仕組みです。さて、甘い香りの源は、花なのでしょうか葉の蜜腺なのでしょうか。お確かめあれ。

1週間経つと、イロハモミジ(伊呂波紅葉)の両性花の姿は大きく変わっていました。花弁は既になく、萼も殆どなくなっていて、プロペラの出現です。竹トンボの様に舞い上がって遠くに飛んで行くのはいつ頃になるのでしょうか。

その並びの生垣の南端近くに、ムベ(郁子)の花が咲いています。雌雄別で、白っぽい花が雌花、内側の赤紫色がはっきりしている花が雄花です。むべなるかな……??

雄花の雄蕊は6本が纏まっているので、あたかも一本である様に見えます。逆に雌花の方は雌蕊が3本見えます。なので、雌花と雄花を取り違えて見立ててしまいそうです。

正門を入ってすぐ右手のコマユミ(小檀)が淡緑色の花を沢山つけています。4本の短い雄蕊が円盤部の縁から伸び、中央にやはり短い雌蕊が見えています。円盤部には蜜が溢れんばかりです。

正門の正面にはニシキギ(錦木)がやはり淡緑色の花を沢山つけています。写真で見ても実物を見ても、コマユミの花と区別がつきません。違いは枝にカミソリの刃の様な翼があるかないか。翼があるのがニシキギ、ないのがコマユミです。と言っても、ニシキギでも若い枝には翼がないので、ここに掲げた写真ではもはや区別不能ですね。蜜に引き寄せられてか、アリが集まってきています。

庭に数あるタブノキ(椨)も小さな花を多数咲かせています。個々の花は小さいながらも、集団で咲きますし、均整の取れた容姿とくっきりと鮮やかな明るい色合いで目立ちます。一番外の雄蕊6本と真ん中の雌蕊1本は明らかですが、その間にも何やら色々とあります。外の雄蕊と同じ色の3本が花粉を放出しない雄蕊(仮雄蕊というのだそうです)、濃い黄色の6本が蜜を出す腺体だそうです。小さくても虫へ訴える力はありますね。

プール管理棟(旧南湖院医局)正面出入り口に向かってすぐ左、まさに足下に、白い小さな花が咲いているのにお気づきでしょうか。シロノヂシャ(白野萵苣)です。チシャ(萵苣)に由来するので、カナ表記は「シ」に濁点ではなくて「チ」に濁点のヂシャです。萵苣とはレタスの和名です。「野」が付きますからレタスそのものではないものの、確かに若菜ならば食用にもなりそうな気もします。爽やかな緑の葉に包まれて咲く花の純白が清楚です。

(準備棟と言っています。)

芝生は、コメツブツメクサ(米粒詰草)の黄色い花が一面に。茶色の塊も目立ちますが、これは花が終わり結実期になったスズメノヤリ(雀の槍)です。他には、ヤハズノエンドウ(こちらも結実して鞘になっていますね)、オオイヌノフグリ等も。

黄色の塊の様に見えますが、沢山の小さな花が集まってそう見えているのです。お馴染みのシロツメクサと同じですね。個々の花は、スズメノエンドウの花くらいに小さい花です。ご覧の様に、マメ科の花です。

梅園の奥に咲く花弁の細いツツジ(躑躅)は、ハナグルマ(花車)と呼ばれるモチツツジ(黐躑躅)の園芸品種のようです。モチツツジは、萼や葉に粘りがあるのが「黐」と付けられているのだとか。でも、普通のツツジもモチモチしていますよね?ハナグルマは最近の園芸品種かと思いきや、江戸時代から栽培されている古典品種であると知りました。成る程、雅びな名前であるのも、そのせいなのでしょう。

梅園には、もう青い梅の実が。上の部分がほんのりと赤みがかってきたものもあります。梅も桜と同じバラ科なので梅の葉にも蜜腺があるかと思い、探すのですが、この写真からはそれらしきものは見つかりません。葉の表側にあるので見えていないのでしょうか、それとも有無は時期に依るのでしょうか?また観察し直してみることにしましょう。

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